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プラダ編集

「従命自動症というのだそうですね」  呂木野が口をはさんだ。 「自動的に命令に従ってしまう特殊な精神病だ。反対に拒絶症というのもある。すべての命令に逆らうのだ。しかし世間の医者が知っているのと、あの狼のとはまるで病気の深さが違う。それに特定の人間の命令にしか反応せんのは例が知られていないだろう」 「案外会長のご命令にも服従するかも知れませんね」  呂木野がへつらうように言うと、会長と呼ばれた男はゆっくりと立ちあがりながら、 「そういうことは好かん。……今何時頃だ」  と若い女に訊ねた。 「四時になります」  若い女は細い声で答えた。 「まだ日暮れには間があるな」      3  会長と若い女が階段を登って二階のドアへ消えると、呂木野と白髪の老人はやっとくつろげる、と言った様子で王朝風の椅子に体を沈めた。呂木野は太い葉巻を一本テーブルの上からとりあげると、ライオンの頭の形をした金色のカッターで吸い口を切った。 「呂木野はマリファナ専門か」  老人が言った。
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